コーチ・コンパス オフィシャルBLOG #28

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[2020.01.07] 【コラム】看取りとコーチング

人生100年時代を迎え、私たちはとても長寿になりました。
その分自分の人生において決断、選択する機会も増えました。
また長寿になることで家族を見送る、大切な人を看取る機会も増えると思われます。
その時、「自分ごと」以外の決断が求められることも考えられます。
看取る人にとって、コーチングはどのように機能するでしょうか?
今回は看取りとコーチングについて考えました。

目次

  • 1.あるクライアントの場合
  • 2.人生会議とコーチング
  • 3.ホリスティックアプローチとチームコーチング
  • まとめ

1.あるクライアントの場合

私にとって忘れられないコーチングセッションがあります。
クライアントが自分の母親の延命治療について話したいとおっしゃいました。
『意識のない母の胃に直接、穴を開けて栄養を送り込む処置(胃ろう)をするべきかどうか』
というのがその日のセッションテーマでした。

そのクライアントの職業は看護師です。
終末医療の専門家でもあり、普段は患者やその家族にアドバイスをしています。
それでも「自分の母親となると決断できないのです」とおっしゃっていました。

・母親が本当は何を望んでいるのか?
・自分が良かれと思って行う医療的な最善の策は、
母親、そして看病する高齢の父親をはじめとする家族にとって本当に幸せなのか?
・私はこの選択をするにあたって、自分のこだわりや価値観を押しつけていないだろうか?

そんなことを話す時間になりました。
コーチングセッション終了後、結論を出し、その通りに実践し、やがて母親を見送りました。
「これで良かった」とおっしゃっていたのがとても印象的です。

病人を支える、患者を支えるシステムは医療従事者を中心に確立していますが、
看取る人の相談相手は、身内や友人が中心になります。
そんなときこそコーチが「隣る人(となるひと)」(そばで支える人)でありたいのです。

2.人生会議とコーチング

2018年11月に「人生会議」という提案が厚生労働省からなされました。

これは、エンディングノートをつくったり、遺言をつくったりするのとは別に、
自分が希望する医療やケアを受けるため、

・大切にしていること
・望んでいること

を「どこで」「どのような医療ケアを受けたいか」を自分で前もって考え、周囲の信頼する人たちと話し合い、共有することです。

人生会議は略称で、正式名称は
ACP(アドバンス・ケア・ プランニング(Advance Care Planning))
といいます。

先日小藪一豊氏のポスターが話題になりました。
看護の世界ではスタンダードになりつつあります。
私は先にご紹介したクライアントから教わりました。

「自分がその時にあなたの心の声を伝えることができるように」
これこそまさにコーチングが機能する領域ではないでしょうか。

3.ホリスティックアプローチとチームコーチング

では具体的にどのようにしていけばいいのでしょうか?
患者の大切な価値観と、看取る人に「これをやってほしい」という価値観をすり合わせ、

・いざと言うときどのような看取りを行って欲しいのか
・自分の希望に加えて相手や周り「三方良し」の人生の旅立ち方を考える
・看取る側の不安や心配事(後の生活や心細さ)も取り扱う
など、オープンネスに話す機会を持つことが大切です。
(縁起でもない話を身近にするための「もしバナゲーム」というカードゲームもあり、こちらを対話のツールとして使用することもお勧めです)

例えば家族が集まる機会に、このような話をする習慣が根付けば、自分らしく、
そして周りにも納得のできる人生を送れるのではないかと考えます。
それが看取る人にも助けになるのではないでしょうか。

そしていざ看取りを考える局面になったら、
「私たちにとってどうありたいか?」を考えます。

ホールシステムコーチングのホリスティック・アプローチのワークに、
「身体的視点を変える方法」があります。
自分と、看取る相手、距離を置いた全体(メタポジション)の視点を持つワークです。
・第一のポジション(自分)
・第二のポジション(看取る相手)
・第三のポジション(俯瞰した「私たち」の視点)
を身体的に変える(椅子に座る、立ち上がる、を繰り返す)ことで、全体感が見えてきます。

自分だけでなく、相手だけでもない、「私たちの視点」を持つことは、
看取る人の決断を支援するでしょう。

まとめ

私事ですが、昨年父を亡くしました。
自営業だった父は働きながら治療をしていました。
父は余命宣告をされたあと、本当ならば好きなこと「だけ」をして過ごしたかったと思います。
しかし家族としては、家業の継続も大切なので「あの書類はどこにあるの」などと、残された貴重な時間を使ってでも、父に仕事のことを訊く必要がありました。
これも看取る人にとっては大きなストレスでした。

看取る人は、「当人のやりたい事」と「家族が望むこと」、そして「一般的にできる治療・療養」の三つ巴で、どうすべきか、誰に寄り添えばいいのかとても迷う瞬間があると思います。

そんな時にチームコーチングが機能すると私は考えます。
何が正解かは誰にもわかりません。何が正解かはわからない中で、関係する人たちの納得感が増して、「三方良し」になるために、コーチングは効果的です。
「決めることへの支援」は私たちにとって救いとなるでしょう。

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