
ビジネスコーチ&FPの矢頭聖子(合同会社コーチ・コンパス)です。
大阪を拠点に、関西・全国のファミリービジネスオーナーとお仕事しています。
「こんなご相談から」という形で、ファミリービジネスやセカンドライフなど、
私が関わっている領域の課題を取り上げています。
ここでご紹介する相談は、実際に起こりうる状況やこれまでの経験をもとに、プライバシーに配慮して再構成したものです。
特定の個人・企業を示すものではありません。
「父も私も、会社を守りたいという気持ちは同じなんです。
でも、私が新しいことを始めようとすると、父は『そんなことをしたら会社が危なくなる』と言います。
私は逆に、今のまま何も変えないほうが、会社を守れないと思っています。
目指していることは同じはずなのに、どうして話が合わないのでしょうか」
ファミリービジネスでは、親子で意見が違うことは珍しくありません。
でも、もう少し丁寧に話を聞いてみると、
「意見の違い」に見えて、実は
「同じ言葉を、違う意味で使っていた」ということがあります。
例えば、親子ともに
「会社を守りたい」
と言っているとします。
父親にとっての「守る」は、
長年のお客様との関係を守ること。
従業員の雇用を守ること。
これまで築いてきた信用を守ること。
会社を危険にさらさないこと。
かもしれません。
一方、後継者にとっての「守る」は、
時代に合わせて事業を変えること。
新しい顧客を開拓すること。
収益構造を見直すこと。
10年後にも会社が存続できる状態をつくること。
かもしれません。
どちらも「会社を守りたい」。
でも、見ている景色はずいぶん違います。
すると親からは、
「せっかく守ってきた会社を変えようとしている」
ように見える。
子どもからは、
「このままでは会社を守れないのに、変化を拒んでいる」
ように見える。
同じ「守る」という言葉が、対立を生んでしまうことがあります。
「会社を成長させたい」
これも、一見すると分かりやすい言葉です。
でも、「成長」とは何でしょう。
売上を増やすこと。
社員を増やすこと。
事業規模を大きくすること。
それを成長と考える人もいます。
一方で、
利益率を高めること。
働きやすい会社にすること。
得意分野に集中して、あえて規模を追わないこと。
それを成長と考える人もいます。
「もっと会社を成長させてほしい」
「僕だって成長させたいと思っている」
ここまでなら、話は合っています。
でも、
「ところで、あなたにとって成長って何?」
と聞いてみると、違う答えが返ってくるかもしれません。
「家族を大切にする」も、人によって違う
さらに難しいのが、
「家族を大切にする」
という言葉です。
親にとっては、
家族で力を合わせて会社を守ること。
困ったときには助け合うこと。
先代から受け取ったものを次の世代につなぐこと。
かもしれません。
子どもにとっては、
家族だからこそ、それぞれの人生を尊重すること。
会社に入るかどうかも本人が選べること。
仕事の関係と家族の関係を分けること。
かもしれません。
「家族を大切にしたい」
その思いまで同じなのに、
そこから選ぶ行動は違う。
だからこそ、
「どちらが家族を大切にしているか」
という話にしてしまうと、対話が難しくなります。
私たちは、相手が自分と同じ言葉を使っていると、
同じ意味で話していると思いがちです。
特に家族では、
「そんなこと、言わなくても分かるだろう」
となりやすいものです。
でも、長く会社を経営してきた親と、
これから経営を担おうとする子どもでは、
経験も、立場も、見ている時間軸も違います。
それぞれの経験や立場が、同じ言葉に異なる意味を与えます。
だから、
「会社を守るべきか、変えるべきか」
と議論する前に、
「あなたにとって『会社を守る』って、具体的にどういうこと?」
と聞いてみる。
これは、とてもシンプルな問いです。
でも、そこから初めて見えてくるものがあります。
家族会議やファミリーミーティングでは、それぞれが
何を大切にしているのかを知ることから始めます。
「お父さんが言う『守る』って、そういう意味だったんだ」
「あなたが言う『成長』は、会社を大きくすることじゃなかったんだね」
そんなふうに、お互いが使っている言葉の奥にあるものを知る。
それだけでも、対話の景色は変わります。
お互いの違いが見えてくると、そこから新しい対話を始めることができます。
もし、ご家族で会社のこれからについて話す機会があれば、
こんな問いを投げかけてみてはいかがでしょうか。
「あなたにとって、『会社を守る』とは何を守ること?」
「あなたにとって、『会社が成長する』とはどんな状態?」
「あなたにとって、『家族を大切にする』とはどういうこと?」
それぞれの答えを、まずは並べてみてください。
「同じ言葉なのに、こんなに違うんだ」
と分かることから、次の対話が始まります。
親子で同じ言葉を使っていても、
見ている景色はそれぞれです。
あなたの家族が何気なく使っている言葉には、
どんな景色が見えているでしょうか。
大阪・関西でファミリービジネスの承継・ファミリーミーティングをお考えの方、
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