
ビジネスコーチ&FPの矢頭聖子(合同会社コーチ・コンパス)です。
大阪を拠点に、関西・全国のファミリービジネスオーナーとお仕事しています。
「こんなご相談から」という形で、ファミリービジネスやセカンドライフなど、私が関わっている領域の課題を取り上げています。
ここでご紹介する相談は、実際に起こりうる状況やこれまでの経験をもとに、プライバシーに配慮して再構成したものです。特定の個人・企業を示すものではありません。
「そろそろ会社を子どもに継がせようと考えています。
株をどうするか、相続や税金をどうするか。
専門家にも相談しないといけないと思っています。
でも、その前に家族で何を話しておけばいいのでしょうか。
子どもが本当に会社を継ぎたいと思っているのかも、実はきちんと聞いたことがありません」
事業承継というと、株式、相続、税金などの話が最初に思い浮かびます。
もちろん、どれも大切です。
でも、その前に家族で話しておきたいことがあります。
「会社を継ぐ」は、みんな同じ意味でしょうか
親は、
「いずれ子どもが会社を継ぐものだ」
と思っている。
子どもは、
「いつかは継がなければならないのだろう」
と思っている。
一見、同じ方向を向いているように見えます。
しかし、
「継いでほしい」と「継ぎたい」は違います。
「継ぐつもり」と「今の会社をそのまま継ぎたい」も違います。
お互いに分かっているつもりで、実は確認していない。
家族だからこそ、そんなことがあります。
事業承継では、目に見えるものが動きます。
株式。
経営権。
資産。
役職。
けれど、承継するものはそれだけではありません。
創業したときの思い。
守ってきた取引先との関係。
従業員への思い。
会社として大切にしてきたこと。
逆に、
「これは次の世代では変えてもいい」
と思っていることもあるでしょう。
そこで、まず現経営者に考えていただきたい問いがあります。
「私は、この会社の何を次の世代に渡したいのだろう?」
株式の割合を決める前に、この問いについて話してみる。
事業承継の景色が少し変わってくるかもしれません。
一方で、渡す側だけで承継は決まりません。
後継者にも、
残したいもの。
変えたいもの。
新しく始めたいもの。
そして、引き受けたくないものがあるかもしれません。
「せっかく会社を残してやるのだから」
という親の善意と、
「自分の人生として、どう経営したいのか」
という子どもの意思は、必ずしも同じではありません。
だから、
「継ぐか、継がないか」
だけを確認するのではなく、
「もし継ぐとしたら、どんな会社にしていきたい?」
まで聞いてみる。
承継は、コピーをつくることではありません。
次の世代が、自分たちの経営を始めることでもあります。
事業承継は、現経営者と後継者だけの問題に見えます。
でも、株式や相続が関係すると、後継者ではない兄弟姉妹や配偶者なども無関係ではありません。
「会社は長男が継ぐから」
「妹は会社に関係していないから」
そう思っていても、
会社の株式。
個人の財産。
相続。
家族としての公平感。
それぞれが絡み始めます。
ここで大切なのは、
「平等にすること」と「みんなが納得できること」は、
必ずしも同じではないということです。
だからこそ、数字を決めてから説明するのではなく、
その前に家族それぞれが何を大切にしているのかを知っておくことに意味があります。
もちろん、家族だけで株式や税金の答えを出す必要はありません。
そこは、税理士、弁護士、金融機関など、それぞれの専門家の力を借りるところです。
むしろ家族で話しておきたいのは、
「何を実現したいのか」
です。
例えば、
会社を次の世代にも残したい。
経営する子どもが動きやすい状態にしたい。
後継者ではない子どもにも納得してもらいたい。
自分たち夫婦の老後も大切にしたい。
従業員が安心して働けるようにしたい。
こうした希望が見えてくると、税務、法務、財務などの専門家にも相談しやすくなります。
「どうすれば税金が一番安くなるか」だけではなく、
「私たちは、こんな承継をしたい。そのためにどんな方法がありますか」
と相談できるからです。
家族会議というと、少し大げさに感じるかもしれません。
何かを決定しなければならないようにも聞こえます。
でも、最初から決める必要はありません。
「お父さんは、会社の何を残したい?」
「あなたは、この会社をどうしていきたい?」
「会社を継がない家族は、どう思っている?」
そんな話をするだけでもいい。
最初の家族会議は、
「決める場」ではなく、
「お互いが何を考えているのかを知る場」。
そのくらいから始めるほうが、話しやすいこともあります。
もし、そろそろ事業承継を考えなければと思っているなら。
税金や株式の話を始める前に、こんな問いを家族に投げかけてみてはいかがでしょうか。
「この会社について、これからも残したいものと、変えてもいいものは何だろう?」
答えは、家族それぞれ違っていて構いません。
その違いを知ることが、事業承継のスタートになることがあります。
株をどう渡すか。
相続をどうするか。
税金をどうするか。
その答えを探す前に、
「私たちは、何を次の世代につなぎたいのか」。
まずは、そこから話してみませんか。
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